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田川市 石炭・歴史博物館 山本作兵衛コレクション展

福岡県は田川市にある「田川市石炭・歴史博物館」に行ってきました。ここで行われている「山本作兵衛コレクション展」が、2011年9月17日から開催されていたからです。この企画展は2012年1月で終了する予定だったのですが、好評を受け3月11日まで延長されています。hakubutsu.jpg

 

山本作兵衛は水彩画や水墨画の手法で、リアルな炭鉱現場や炭鉱生活を、697点の作品として後世のために残しています。それが2011年5月に日本で初めてユネスコ世界記憶遺産に登録されました。彼自身が炭鉱労働者であり、作品には現場労働者でないと知りえない、細かな描写や事実に根ざした臨場感が表現されていると言われます。

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その筆致は大変達者で力強く、わかりやすい説明書きなどが細かく付され、見るものを圧倒します。還暦を迎えての作画活動は、自身の魂と誇りと後世への愛情にあふれた遺産として大変価値の高いものだと感じました。入館料は一般210円、学生などは半額以下の安い料金で堪能することができます。

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筑豊地方はかつて日本有数の炭鉱地帯でした。この三井田川鉱業所跡地をはじめとして、筑豊の豊富な石炭資源によるエネルギーが、明治・大正・昭和の産業や経済の発展に大きく寄与してきましたが、現在はエネルギー革命によって他の様々な手段にとって変わられました。しかし今東日本大震災を契機として、原子力発電から自然エネルギーへ見直される中、まだまだ豊富な火力発電資源として、その採掘方法や活用方法が見直される可能性もはらんでいます。

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1983年に建てられたこの石炭・歴史博物館の中の展示では、石炭の実物や作業機械などが豊富に展示されていました。削岩機やベルトコンベアーの模型などもあります。ishi.jpg

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ジオラマ模型の「手掘採炭」をする夫婦の像があります。夫はふんどし姿で這いつくばって坑道の先端を手掘りしています。妻は上半身裸で石炭を背負って運んでいます。展示館の中の照明により坑道も明るく見えるのですが、実際には相当暗い中でランプの灯りを頼りに、狭い坑道を這うように不安な作業をしていた時代が長かったようです。

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これを見ていると、南米チリで起こった落盤事故が思い起こされます。彼の事故では人命が奇跡的に救助されましたが、かつては日本の各地の炭鉱で爆発事故、落盤事故、ガスや湧水事故で大変多くの尊い命が犠牲になってきました。

そういった背景もあり展示には労働組合の結成や活動についての展示もありました。厳しい自然条件との戦いだけではなく、労働条件や待遇など人権をめぐる闘いもあったということです。

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中には当時の写真も掲載されています。「ヤマ」の坑道には女性労働者も多く、夫婦や兄妹で採炭採掘作業をする例も多かったようです。女性が半身裸で作業をする写真、混浴で入浴する写真、すすけながら笑顔での集合写真など、深く胸を打つような記録です。

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一方屋外にも大規模な展示があります。目を引くのが「伊田竪坑櫓」の赤い鉄塔です。これは坑道へのケージを上下させるため実際に使用されていたものです。

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2本の大きな煙突は、「炭坑節」にも歌われた「あんまり♪エントツが高いので♪」、45mの威容です。

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蒸気機関車やトロッコ、ロードヘッダーと呼ばれる運搬車なども展示されています。古ぼけた木造の平屋は「産業ふれあい館」であり、大正から昭和のころの「炭鉱住宅」の実物模型です。炭鉱生活の質素な暮らしを彷彿とさせます。

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しかし庭園に建立されている「炭鉱夫之像」は、力強く遠くを見据えたように堂々と立っています。きびしくつらい炭鉱生活を支えたのは、未来への強く明るい希望があったからだと想像させられます。どんな逆境にあっても前向きに生きて歴史を築いてきたのが先人であり、我々の祖先だったのでしょう。

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そして庭園の隅には歌人「種田山頭火」の石碑が刻まれていました。

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   廃坑 若葉してゐるは アカシヤ

山頭火の歌は直感的でわかりやすいものが多いですが、これはどう解釈しましょうかねえ。

石碑の中央では、ネコも首をかしげていました。


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