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城島 日本酒 酒蔵びらき

国内で主だった日本酒の産地と言えば、京都の伏見、兵庫の灘、広島の西条、そして福岡(久留米)の城島と言われています。それ意外にもたくさんあるのですが、古い歴史を持った酒造りの発祥地ということになるでしょうか。

これらはいずれも酒造りに欠かせない良質な水と酒造りに適した米の産地になっています。

伏見の水は「伏見七ッ井」の伏流水、米は京都産「祝」、兵庫は灘五郷の「宮水」、米は播州平野の「山田錦」、西条は龍王山の伏流水、米は「八反錦」、そして城島は筑後川の伏流水、米は福岡産「夢一献」となります。

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城島を含む久留米市「三潴」(みずま)地区では、新酒の時期毎年2月11日に「酒蔵びらき」を開催しており、今年は18回目が賑やかに開催されたそうです。今年は事前に本場広島駅前にも乗り込んで、PRを行っていました。酒蔵開きは残念ながら行けなかったのですが、2月の末についでがあり念願かなって訪れることができました。

なぜ念願だったかというと、出張先の福岡県内のあるスーパーで売り出しをしているのが目に留まりました。精米歩合70%ながら720ml瓶純米酒がなんと680円でした。こんなに安いけれども・・・ものは試しと1本買って飲んでみると、これが意外にもおいしい!清冽ではないけどもやさしくしっとりした感じ。いわゆる「女酒」でした。体調にもぴったりくる感じであっという間に7割空けてしまいました。閉店間際のスーパーにまた駆け込んでもう1本はお土産にすることにしました。このお酒が城島で造られた「比翼鶴」(ひよくつる)でした。

*女酒というのは軟水(ミネラルが少ない)で作られる酒で、やわらかく芳醇な味。男酒は硬水で作られる、発酵が進みやすく淡麗辛口の酒のことです。

城島地区は久留米市中心部からは車で10分程度、九州道は広川や八女インターからは15分程度です。今回は長崎道の東背振(ひがしせふり)インターから下ることにしました。

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このすぐ近くには弥生時代の「吉野ヶ里遺跡」公園が整備されています。こちらからだと多少距離はあるのですが、道路が空いているために15分もかからず到着できます。

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国道385号をまっすぐ南下し、大野北信号を左折すると、筑後川にかかる六五郎橋を渡ります。

ほど近くにある城島の中心部、「城島中町」の信号を左折します。 

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北西方向に進むと山の井川のたもとに看板が目立ちます。

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 オブジェのある橋の上からも遠くの河畔に煙突を望むことができました。

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山の井川は筑後川の支流で、すぐこの先は合流部となります。雪解けシーズンなのか小さな川ながら満々と水を湛えていました。比翼鶴酒造はその山の井川のほとりにありました。

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敷地の中に入ってやっと事務所を見つけ出しました。

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「あのー、趣味で見学に伺ったんですが、見せてもらうことはできますか?」といったらお母さんと事務員さんらしき方が、「ちょっと待って下さいね・・・」と言って電話をかけています。「今常務が案内に参りますので」。

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数分すると白づくめのいでたちで二ノ宮常務が来られました。「済みませんねえ、お忙しい時に・・・」。「いいですよ、早速参りましょう」ということで気軽に案内してくれました。

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「ここが浄水場です。地下200mから伏流水をくみ上げているんです。そのままでも綺麗なんですが、さらに酸化鉄などを合成ろ過しているんです」。

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それから「醸造蔵」に丁寧に手を殺菌剤で洗浄してから入りました。

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最初に目にしたのは「浸積」(しんせき)器です。これは白米を水に浸し吸水させる装置だそうです。

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その次に「蒸米」器です。これは100℃の蒸気でお米を蒸すのだそうです。

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蒸し上がった米は「放冷」器で冷却するのだそうです。2本の大きな管に外向きのファンが稼働し、室内外気を外に排気する形で冷ますそうです。日本酒造りで重要と言われる寒冷な気温ですが、ここでは5℃から8℃くらいでの処理を目指しているそうです。

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その後で発酵中の麹を食べさせて頂きました。えも言われぬ香ばしい香り、甘酸っぱくて懐かしーい味。これをお酒にしたらまずいはずないじゃんと思わせました。麹を食べるとお酒の有難みが倍増するような気がします。

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そして「仕込み」となります。大きなタンクごとに仕込むわけですが、時期や温度、米や麹の出来具合によって微妙に変化するのだそうです。

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タンクの周りに黒い帯が巻かれていましたが、これは「温度調節ベルト」で、発酵して温度が上昇し中で対流を起こしやすくし、均質化をはかるためのものだそうです。

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タンクの中を覗かせてもらいましたが、確かに白濁液のもの、大きな泡が山状に盛り上がったものなどいろいろでした。

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もろみの発酵が十分進んだらいよいよ「搾り」となります。肥料袋かアコーディオンのような薄い形状の袋にもろみを流し込んでいき、側面から圧搾機で圧縮していきます。そうすると搾られた原酒が滴となって迸り落ちてくるという仕組みです。

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搾った原酒はそのまま「生酒」などとして市場に出るもの以外は、基本的には「火入れ」をするのだそうです。これをしないと発酵がますます進んでいわゆる「腐造」となってしまうため、乳酸菌を消滅するのです。

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上部から伸びた管から熱を放射して処理をするのだそうです。

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2階に上がると「研究室」がありました。毎日できた酒の性質や具合を細かなデータとして保存し、いいお酒づくりの研究を不断にやっておられるそうです。

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ふと見上げると天井の隅におわすは「松尾様」です。これはお酒の神様であり京都の神社の神様だそうです。酒質の分析という科学的な手法と、いいお酒ができますように頑張りますので見ていて下さい、という情緒的な手法が同居していて面白いなあと思いました。

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すぐ隣には酵母室があり酵母が眠っていました。文字通り毛布か布団のような布にくるまれて寝かされていました。

 この間40分程度でしたが、二ノ宮常務には細かく丁寧に説明して下さり有りがたかったです。お陰ではじめて酒造りの一端をリアルに垣間見ることができました。

事務所に戻り、感謝の意味も込めてお酒を買って帰ることにしました。

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精米歩合55%の純米酒「耶馬寒梅」とお勧めだった本醸造「超辛口」、720mlを2本2200円で頂きました。写真撮影もブログアップも許可を頂き、丁寧にお礼を述べ蔵を後にしました。

折角なので「城島中町」信号まで戻り、すぐ南にある「花の露」酒造さんにも伺いました。ここは城島では最も歴史があり1745年から270年ほども営んでおられます。特に純米酒では常に入賞、大賞も受賞するなど定評のある蔵です。

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広い庭の周りには大きな蔵が並んでいます。道を隔てた反対側にもなまこ壁の蔵や貯蔵庫が林立しています。

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ここでは蔵の見学はしませんでしたが、評判の「花の露 純米」精米歩合60%、1300円を買って帰りました。

お酒の味についてですが、それぞれ個性や人の趣味があるので表現しにくいところですが、「耶馬寒梅」はまろやかでまとわりつくような味わいでした。「超辛口」は思ったほど辛くなくバランスがとれた味。食中酒としては秀逸でいくらでもすんなり飲めてしまいます。「花の露」はすっきりとして飲みやすく吟醸香のある味でした。確かに花のような明るさ華やかさを感じました。

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帰り際に北東方向にあった「優良地酒取扱処」の「竹屋」さんへお邪魔しました。そうしたら女将さんが思いを込めてこうおっしゃってくれました。「昔は城島には20軒も造り酒屋があったんですよ。それが今では4軒になってしまった。でもね若い人や2代目さんたちが頑張って、組合や研究会をやって盛り返そうと努力しているんです。うちの息子もそんな心意気を感じて、わざわざこんな田舎に酒屋をオープンし、そうした人たちを応援しようと頑張っているところです。」

かつて全国では3000以上もの酒蔵がありました。それが今や半減し日本の酒づくりは危機に瀕しています。これは酒づくりの危機ではなく、日本の文化、食文化、雇用問題、地域経済の危機です。大きく言えば地方の疲弊は日本の疲弊だと言えます。そんな中で新しい技術、新しい酒や酒文化を研究し、地域を盛り上げていこうとする人たちが確実に存在することを実感しました。こうした産業が、地域が、人達が存在できてこそ、笑いあえてこそ、日本が存在していける、幸福につながるそんな気がしました。

ここで「もみじの細道」流ダジャレ川柳を一句。(モモ:やらなくていーよ)

   城島の 心は常時 まつりだよ (モモ:シツレイだろ!)

解説(モモ:だいたい察しはつくなあ):長年酒造りをしてきた城島の人達の、酒造りと地域づくりへの思いは、いつも酒蔵びらきと同じ祭りの心意気だよ!


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moz

日本酒お好きなんですね。とてもお詳しいです。 ^^
それにしても、突然行かれたのに親切な応対をしてくださったんですね。
美味しいお酒ができるはずです。
じぶんは日本酒はまだまだ・・・良く分かりません。お酒の行き着く先は日本酒のようですね。未熟者です。^^;
by moz (2012-03-11 17:37) 

momiji

mozさん、こんばんわ!
初niceありがとうございます(^^;)
私の裏ブログなので、あまり目立たないし・・・
長くて難しいし・・・

日本酒めちゃ好きなんですよお(^^)、特に安くておいしい純米吟醸あたり。
350種くらい試飲しましたが、テイストのバリエーションはすごいですね。
どんなお酒よりも繊細で、深い食文化だと感じます。
今も勉強中です(^^)
by momiji (2012-03-11 23:15) 

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